「社内のあの資料、どこにあったっけ?」「先月の会議で決まったプロジェクトの要件は?」──日々の業務時間の約20%を占めると言われる「情報検索」の時間。2026年現在、この無駄な時間を「ゼロ」にする技術が、すでに皆様の手元にあることをご存知でしょうか。
それが、Google Workspaceの標準機能として定着しつつある「Gemini Gems(ジェミニ・ジェムズ)」と「Googleドライブ」の高度な連携機能です。
2024年のリリース当初は「カスタムチャットボット」としての側面が強かったGemsですが、2025年のアップデートを経て、現在は「社内データを参照元(ソース)とする簡易RAG(検索拡張生成)」を、エンジニアの手を借りずに構築できるツールへと進化を遂げました。
本記事では、センターエッジ合同会社が運営する「DXメディア」の専属ライターが、2026年の最新情報に基づき、Gemini Gemsを活用した「社内RAG」の構築手順、セキュリティ対策、そして経営者が知っておくべき費用対効果について徹底解説します。もはや高額な外部RAGツールは不要かもしれません。Google Workspaceユーザーであるならば、この記事を読み終えた瞬間から、御社のDXは次のフェーズへと突入します。
Gemini Gemsとは?Googleドライブ連携がもたらす「RAGの民主化」
生成AIの活用が当たり前となった2026年において、企業が直面している最大の課題は「AIに自社のことをどう教えるか」でした。一般的なAIモデルは汎用的な知識しか持っておらず、御社の「就業規則」も「今期の営業戦略」も知りません。これを解決する技術がRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)ですが、従来は構築に専門知識と多額のコストが必要でした。
この壁を破壊したのが、Googleが提供する「Gemini Gems」です。
Gemsの基本概念と「ソース機能」の進化
Gemini Gemsは、一言で言えば「特定のタスクや知識に特化したカスタムAIエージェント」を作成できる機能です。OpenAIの「GPTs」に近い機能ですが、Google Workspaceとの親和性において決定的な違いがあります。
特に重要なのが、今回フォーカスする「ソース機能(Knowledge Source)」です。2026年現在、Gemsのソース機能は以下の点で劇的な進化を遂げています。
- ダイレクト・ドライブ・グラウンディング(Direct Drive Grounding): ファイルをアップロードするのではなく、Googleドライブ上の「特定のフォルダ」を知識源として指定し、リアルタイムに同期する機能。
- マルチモーダル参照: ドキュメント(Docs, PDF)だけでなく、スプレッドシート(Sheets)の数値データや、スライド(Slides)の図解内容まで横断的に理解する能力。
- 権限継承(ACL)の自動適用: RAG構築で最も頭を悩ませる「閲覧権限のないファイルの参照防止」が、Workspaceの標準権限設定と連動して自動処理される点。
つまり、Google Workspaceユーザーにとって、Gemsは単なるチャットボットではなく、「社内ファイルサーバーに脳みそを取り付ける」ためのインターフェースなのです。
なぜ「Googleドライブ参照」が革命的なのか
※実際に、センターエッジの社内用ドライブをソースにし、経営理念を参照したスクショ
これまでの社内検索(Google Cloud Searchなど)は、「ファイルを探すこと」がゴールでした。しかし、Gems×Googleドライブ連携が目指すのは「答えを見つけること」です。
例えば、「A社のプロジェクトの進捗はどうなっている?」と聞いたとき、従来の検索では関連する議事録や日報がリストアップされるだけでした。しかし、Gemsはそれらのファイルを読み込み、「現在は要件定義フェーズで、来週に中間レビューが予定されています。ただし、B氏の報告によると、API連携の部分で遅延リスクが指摘されています」と、内容を要約・統合して回答します。
この「検索(Search)」から「回答(Answer)」へのシフトこそが、2026年のDXにおける最大のトレンドであり、それを追加コストなし(既存のライセンス内)で実現できる点が、Gemsの革命的な価値なのです。
【実践編】Google Workspaceで「簡易RAG」を構築する3ステップ
ここからは、実際にGemini Gemsを使って、社内データを参照するRAGを構築する手順を解説します。2026年のUIを前提としていますが、基本的な流れは非常にシンプルです。
前提条件:
- Google Workspaceの契約(Business Standard以上推奨)
- Gemini for Google Workspace(Gemini Business / Enterprise / Education)アドオンの適用
Step 1: データ整備(最重要プロセス)
「AIは魔法の杖」ではありません。参照元のデータが整理されていなければ、AIも混乱します(Garbage In, Garbage Out)。Gemsを作成する前に、以下の基準でGoogleドライブ内のフォルダを整備してください。
- フォルダの集約: 参照させたいファイルを1つの親フォルダ(例:「営業部_ナレッジベース」)にまとめる。ショートカット機能を使えば、元の場所を動かさずに集約可能です。
- ファイル名の明確化: 「20260227_議事録.pdf」ではなく、「【A社案件】要件定義MTG議事録_20260227.pdf」のように、中身が推測できるファイル名に変更します。Gemsはファイル名も重要なコンテキストとして認識します。
- 不要なファイルの除外: 古いバージョンのファイルや、書きかけのメモ書きは、別の「アーカイブ」フォルダに移動させ、AIのノイズにならないようにします。
Step 2: Gem(ジェム)の作成とソース設定
データが整ったら、Geminiのインターフェースから実際にGemを作成します。
- Gemini (gemini.google.com) にアクセスし、左サイドバーの「Gems マネージャー」を開きます。
- 「新しいGemを作成」をクリックします。
- 名前を設定: わかりやすい名前をつけます(例:「営業ナレッジアシスタント」)。
- インストラクション(指示)を記述:
ここがAIの「人格」を決める重要な部分です。以下のようなプロンプトを設定します。「あなたはセンターエッジ合同会社の優秀な営業アシスタントです。ユーザーからの質問に対し、指定されたGoogleドライブ内の資料のみを根拠として回答してください。事実にないことは『資料に記載がありません』と答えてください。回答は常に結論から述べ、参照したファイル名を明記してください。」
- 知識(Knowledge)の追加:
「ファイルを追加」または「ドライブから選択」をクリックし、Step 1で用意したフォルダを選択します。これがこのGemの「脳」となります。2026年の最新バージョンでは、フォルダ内のサブフォルダも再帰的に読み込まれます。
Step 3: 共有と権限設定
作成したGemは、自分だけで使うこともできますが、チームで共有してこそ真価を発揮します。
- リンク共有: 作成完了画面で「リンクをコピー」し、ChatやSlackでチームメンバーに共有します。
- 権限の確認: ここが重要です。Gem自体を共有しても、参照先のGoogleドライブフォルダへのアクセス権がないユーザーがそのGemを使った場合、AIはそのファイルを「読むことができません」。つまり、回答が生成されません。
これにより、意図せず機密情報が流出するリスク(情報漏洩)がシステムレベルで防がれています。DX担当者は、Gemの共有と同時に、参照元フォルダの共有設定(Googleグループでの管理を推奨)を必ず確認してください。
経営者・DX担当者が知るべき「Vertex AI」との使い分け
「GemsでRAGができるなら、高価なVertex AI Agent Builder(旧 Vertex AI Search and Conversation)は不要なのか?」
これは、多くの経営者から寄せられる質問です。結論から言えば、「規模と用途による使い分け」が正解です。2026年現在の機能差を比較表で整理しました。
| 項目 | Gemini Gems (Google Workspace) | Vertex AI Agent Builder (Google Cloud) |
|---|---|---|
| 主な対象 | 個人 〜 チーム・部署単位 | 全社規模 〜 顧客向けサービス |
| 構築難易度 | 超低 (ノーコード) 現場担当者が数分で作成可能 |
中 〜 高 (ローコード/プロコード) エンジニアによる設計・実装が必要 |
| 参照データ量 | 中規模 (フォルダ単位) ※コンテキストウィンドウ依存 |
大規模 (テラバイト級) ※ベクトル検索による高速処理 |
| 回答精度・制御 | プロンプト依存 (高いが完璧ではない) | 非常に高い (グラウンディング制御可) 参照元の厳密な引用が可能 |
| API連携 | 不可 (Workspace内での利用限定) | 可 自社アプリやLINE、Slackボットに組み込み可能 |
| コスト | ライセンス料金に含まれる (Gemini Business/Enterprise) |
従量課金制 (検索クエリ数 + 生成トークン数) |
使い分けの指針: 「スモールスタート」から「全社展開」へ
センターエッジでは、以下のロードマップを推奨しています。
- フェーズ1 (導入期): Gemini Gemsを活用し、部署単位で「プチRAG」を乱立させる。まずは「AIに聞けばわかる」という体験を現場に定着させ、データの整理整頓(構造化)を進める。
- フェーズ2 (拡大期): 複数の部署でGemsの効果が実証されたら、全社共通のナレッジ(就業規則、全社ポータル、製品DBなど)について、Vertex AIを用いた本格的なRAGシステムの構築を検討する。
いきなり数千万円をかけて巨大なRAGシステムを作る時代は終わりました。まずはGemsで「PoC(概念実証)」を行うのが、2026年のスマートなDX戦略です。
2026年の日本企業における活用事例5選
では、実際に日本の企業現場ではGems×Googleドライブ連携がどのように使われているのでしょうか。具体的なシナリオを見てみましょう。
事例1: 営業部門「過去提案書の検索・再利用」
課題: 「似たような提案書を過去に作ったはずだが、探すのに30分かかる」「誰が詳しいか分からない」
Gems活用: 過去3年分の提案書フォルダをソースにした「提案書マイスターGem」を作成。
プロンプト例: 「製造業向けのDX提案で、コスト削減効果を訴求しているスライドを探して。その中の『導入効果シミュレーション』のページ構成を教えて。」
効果: 資料作成時間が平均40%短縮。若手社員でもベテランのナレッジを即座に引き出せるようになった。
事例2: 人事総務「社内規定FAQボット」
課題: 「忌引休暇は何日?」「交通費の申請期限は?」といった同じ質問への対応に追われる。
Gems活用: 就業規則、経費精算マニュアル、福利厚生ガイドをソースにした「総務コンシェルジュGem」を作成。
プロンプト例: 「来週結婚式を挙げるんだけど、休暇は何日取れる?申請には何が必要?」
効果: 総務部への問い合わせ件数が70%削減。回答の標準化も実現。
事例3: プロジェクト管理「議事録からのタスク抽出」
課題: 毎週の定例会議の議事録が溜まる一方で、決定事項やTodoが埋もれてしまう。
Gems活用: プロジェクトフォルダ全体をソースにした「PMアシスタントGem」を作成。
プロンプト例: 「今月の議事録すべてを確認し、まだ完了報告がない『田中さん』のタスクをリストアップして。」
効果: タスクの抜け漏れが激減。会議の冒頭で「前回の積み残し」を即座に確認できるようになった。
事例4: 技術部門「レガシーシステムの仕様確認」
課題: 10年前に開発されたシステムの仕様書が大量のExcelファイルに分散しており、調査に膨大な工数がかかる。
Gems活用: 旧システムの設計書フォルダを読み込ませた「仕様書検索Gem」を作成。
プロンプト例: 「商品マスタの『在庫フラグ』が更新されるトリガーとなるバッチ処理名を教えて。関連する設計書のページ番号も示して。」
効果: 調査工数を90%削減。ベテランエンジニアの退職に伴うブラックボックス化を回避。
事例5: 経営企画「市場調査レポートのクロス分析」
課題: 購入した複数の市場調査レポート(PDF)を読み比べる時間がない。
Gems活用: 各種レポートを格納したフォルダをソースに「マーケットアナリストGem」を作成。
プロンプト例: 「A社とB社のレポートにおける『2030年のAI市場予測』の数値を比較し、前提条件の違いを表形式でまとめて。」
効果: 経営判断に必要な情報の抽出速度が劇的に向上。
セキュリティとガバナンス:社内データをAIに食わせる際のリスク管理
Googleドライブ連携RAGを導入する際、経営者が最も懸念するのは「セキュリティ」と「データの取り扱い」です。2026年時点でのGoogleのポリシーと、企業側が取るべき対策を解説します。
1. 「学習には使われない」という大原則
Google Workspaceの有償版(Business / Enterprise / Education)において、ユーザーが入力したプロンプトや、参照したGoogleドライブ内のデータが、Googleの汎用AIモデルの学習に使用されることはありません。
これは利用規約(Data Processing Amendment)で明確に定義されており、入力データは企業のテナント内で閉じられた状態で処理されます。ChatGPTの個人版などとは異なり、情報漏洩のリスクを恐れて利用を禁止する必要はありません。
2. ハルシネーション(嘘)への対策
RAGを使っても、AIがもっともらしい嘘(ハルシネーション)をつく可能性はゼロではありません。Gemsでこれを防ぐためには、以下のインストラクション(指示)が有効です。
- 「回答には必ず参照元のファイル名を記載すること」
- 「情報が見つからない場合は、正直に『分かりません』と答えること」
- 「推測で回答せず、引用箇所を明示すること」
また、「AIの回答は必ず人間が確認する」という運用ルールを徹底することも、2026年においても変わらぬ鉄則です。
3. データ・ガバナンスの徹底
前述の通り、Gemsはユーザーの閲覧権限を厳格に守ります。しかし、これは裏を返せば「元々の権限設定が間違っていれば、AI経由で情報が見えてしまう」ことを意味します。
例えば、「役員会議事録」フォルダが誤って「全社公開」になっていた場合、一般社員がGemを使って「今期のリストラ計画は?」と聞けば、AIは答えてしまいます(ファイルが見える状態なので)。
Gems導入は、自社のファイル権限設定を見直す(「棚卸し」する)絶好の機会でもあります。センターエッジでは、こうしたセキュリティ診断も含めた導入支援を行っています。
センターエッジが提案する「AI×社内データ」のロードマップ
2026年、AI活用は「使うか使わないか」の議論を終え、「どう使いこなして競争優位を築くか」のフェーズに入りました。Googleドライブ内に眠る膨大な「暗黙知」を、Gemini Gemsを使って「形式知」へと変えることは、企業の生産性を飛躍的に高める最短ルートです。
しかし、ツールの導入はあくまでスタートラインです。成功の鍵は、「どのような業務課題を解決するために、どのデータをAIに与えるか」という設計にあります。
センターエッジ合同会社がお手伝いできること
私たちセンターエッジ合同会社は、120以上のDXサービスから貴社に最適なツールを選定する「DXセレクト」を運営しています。Google Workspaceの活用に関しても、単なるライセンス販売にとどまらず、以下の価値を提供します。
- プラン選定・コスト最適化: Gemini Business / Enterprise / AI Premiumなど、複雑化するプランの中から、貴社の規模と用途に最適な組み合わせを提案します。
- RAG構築支援: データの構造化から、実践的なGemsのプロンプト開発、Vertex AIへの移行判断まで、技術とビジネスの両面からサポートします。
- 内製化トレーニング: 現場社員が自分でGemを作れるようになるための、実践的なワークショップを開催します。
「Geminiの使い方がわからない」「RAGを試してみたいが、セキュリティが不安」といったお悩みをお持ちの経営者・担当者様は、ぜひ一度、完全無料の相談窓口「DXセレクト」までお問い合わせください。
AIと共に働く未来は、すぐそこにあります。御社のGoogleドライブを、ただの「倉庫」から、最強の「頭脳」へと進化させましょう。




